1.分裂文の仕組みについて、具体例を挙げて論じなさい。
2.法助動詞can、may、mustの多義について、具体的に英文を示して論じなさい。
3.分詞構文の仕組みを、具体例を挙げて明らかにしなさい。
4. 「会話の公理」とは何か。具体例を挙げて説明しなさい。
5.リーチのポライトネスの理論とブラウン・レビンソンのポライトネスの理論を比較考察しなさい。
6.テクストをひとつのまとまりのあるものにするcohesionについてその言語的手段を具体例とともに体系的に論じなさい。
11.分裂文の仕組みについて
分裂文(cleft sentence)とは、本来一文で表現できる内容を形式的に二分し、文中の特定の要素を強調するための構文である。英語では主に It-cleft と Wh-cleft が用いられ、情報構造の観点から重要な役割を果たす。
まず It-cleft の基本構造は It + be + 強調要素 + that / who 節 である。例えば John broke the window. という通常文は、It was John that broke the window. と言い換えることができる。この場合、行為者が John であることが強調され、他の可能性(例:Mary ではない)を暗示する効果をもつ。強調可能な要素は主語だけでなく、目的語や副詞句にも及ぶ。It was yesterday that he met her. では、出来事の時点が焦点化されている。
次に Wh-cleft は What + 節 + be + 強調要素 という形をとる。He needs money. は What he needs is money. と言い換えられ、情報を整理しつつ結論部分を後半に提示する構造となる。この型は談話の流れを整え、聞き手の理解を助ける働きをもつ。
分裂文に共通する特徴は、文法的必然性よりも語用論的要請に基づく点にある。すなわち、話し手がどの情報を新情報・焦点として提示したいかによって選択される構文である。したがって分裂文は、単なる構文変換ではなく、話し手の意図や談話状況を反映する情報構造上の手段であると言える。
2.法助動詞 can・may・must の多義について
法助動詞 can、may、must はいずれも単一の意味に限定されず、文脈に応じて複数の意味を表す多義語である。この多義性は英語のモダリティ体系を理解する上で重要である。
まず can は主に「能力」「可能性」「許可」の意味をもつ。She can swim very well. では能力を、This road can be dangerous. では一般的可能性を表す。また You can leave now. のように口語では許可の意味でも用いられる。
次に may は「許可」と「推量」の二義が中心である。You may use my computer. は丁寧な許可を表し、He may be at home now. は確信度の低い推量を示す。can と比較すると、may は話し手の判断を控えめに表現する傾向があり、形式ばった文体で好まれる。
must は「義務」と「強い推量」を表す。You must follow the rules. は外的・内的義務を示し、He must be tired. は話し手の論理的推論に基づく高い確信を伴う推量である。後者は客観的事実というより、話し手の主観的判断を反映している。
このように、法助動詞の多義性は意味の曖昧さではなく、話し手の態度や認識の程度を柔軟に表現するための体系的特徴である。
3.分詞構文の仕組みについて
分詞構文とは、従属節を分詞(現在分詞・過去分詞)によって簡略化した構文であり、主に書き言葉で用いられる表現である。
基本的には、主節と従属節が同一主語をもつ場合に使用される。When I entered the room, I found him asleep. は Entering the room, I found him asleep. と書き換えられる。このとき、接続詞と主語が省略され、分詞がその役割を担っている。
分詞構文は多様な意味関係を表す。時間を表す例として Walking along the street, I met an old friend.、理由を表す例として Being tired, she went to bed early. が挙げられる。また Even knowing the risk, he accepted the job. のように譲歩を示す場合もある。
一方で注意すべき点として、分詞構文では主語が明示されないため、文頭の分詞が誤って主節の主語以外を修飾する「dangling participle」が生じやすい。これは意味の誤解を招くため、使用には慎重さが求められる。
分詞構文は、簡潔さと情報圧縮を可能にする反面、文脈理解を前提とする高度な構文である。
4.会話の公理について
会話の公理とは、H. P. Grice が提唱した概念で、円滑な会話が成立するために話し手と聞き手が暗黙のうちに共有している原則である。
グライスは会話の公理を四つに分類した。第一に量の公理は、必要な情報を過不足なく提供することを求める。第二に質の公理は、虚偽や根拠のない発言を避けることを求める。第三に関係の公理は、発話が話題に関連していることを要求する。第四に様式の公理は、明確かつ簡潔な表現を用いることを求める。
興味深い点は、話し手が意図的に公理を破ることで「会話的含意」が生じることである。例えば、Did you like the movie? に対して The music was nice. と答える場合、映画全体を評価していないことから「あまり良くなかった」という含意が導かれる。
このように会話の公理は、明示されない意味を推論する仕組みを説明する理論であり、語用論の中核をなす概念である。
5.リーチとブラウン&レビンソンのポライトネス理論
リーチとブラウン&レビンソンはいずれもポライトネスを扱うが、その理論的立場は異なる。
リーチはポライトネスを社会的規範として捉え、「機知の原則」「寛大の原則」など六つのポライトネス原則を提示した。発話が相手に与える負担を最小化し、利益を最大化することが礼儀的であると考える。
一方、ブラウン&レビンソンは「フェイス」という心理的概念を中心に理論を構築した。人は他者から尊重されたいというポジティブ・フェイスと、自由を侵害されたくないというネガティブ・フェイスをもつとされる。依頼や命令はフェイス侵害行為(FTA)となるため、丁寧表現によってその影響を緩和する。
リーチが規範的・社会的視点を重視するのに対し、ブラウン&レビンソンは相互行為と認知を重視している。両者は対立というより補完関係にある理論である。
6.Cohesion(結束性)について
Cohesion とは、テクスト内の文や語が言語的手段によって結びつき、ひとつの意味的まとまりを形成する性質である。Halliday と Hasan によって体系化された。
第一に照応がある。代名詞などによって先行詞を指し示す方法である。I bought a book. It was expensive. の it が該当する。
第二に代用がある。one や do などを用いて語句を置き換える。I like this pen. Give me another one.
第三に省略がある。文脈上明らかな要素を省くことで結束性が保たれる。I ordered coffee, and she tea.
第四に接続詞による結束がある。however, therefore などが論理関係を明示する。
第五に語彙的結束があり、同義語や反復によって統一性が生まれる。
Cohesion は文法的手段と語彙的手段の両面からテクストの一貫性を支えている。。
