⑤「英語の時制体系をまとめたうえで、日本語の時制との対応関係を述べなさい。」
1. 目的
英語における12の時制(Tense)の論理的構造を俯瞰し、日本語の時制体系との相違点を明確にすることで、翻訳や理解における乖離の原因を特定する。
2. 英語の時制体系:12時制の構造
英語の時制は、「3つの時間軸」と「4つの様相(アスペクト)」の組み合わせで構成される。
2.1 時間軸(Time)
- 過去 (Past) / 現在 (Present) / 未来 (Future)
2.2 4つの様相(Aspect)
- 基本形 (Simple): 事実、習慣、不変の真理。
- 進行形 (Progressive): 動作の継続、一時的な状態。
- 完了形 (Perfect): ある時点を基準とした、それ以前からの「継続・経験・完了・結果」。
- 完了進行形 (Perfect Progressive): 完了形と進行形の融合。過去から続く動作の継続。
3. 日本語の時制体系との比較
日本語の時制は、主に述語の末尾(ル形・タ形)で決まるが、英語に比べて「時間軸」よりも「完了したかどうか(アスペクト)」の性質が強い。
3.1 「現在・未来」の混同
日本語では「現在」と「未来」を同じ形で表すことが多いが、英語では明確に区別される。
- 日本語: 「明日、学校に行く(未来)」 / 「毎日、学校に行く(現在・習慣)」
- 英語: “I will go to school tomorrow.” / “I go to school every day.”
3.2 完了形の欠如と補完
日本語には英語の「現在完了形」に直接対応する形が存在しないため、「〜した(過去形)」や「〜している(進行形)」で代用される。
| 英語の時制 | 日本語での主な表現 | 乖離のポイント |
| Past Simple | 〜した | 過去の一点を示す。 |
| Present Perfect | 〜した / 〜したことがある | 日本語では過去形と区別がつきにくい。 |
| Past Perfect | 〜していた / すでに〜していた | 日本語では「過去の過去」を明示する仕組みが弱い。 |
4. 体系的な対応関係の整理
英語と日本語の対応において、特に注意すべきは「状態」と「動作」の捉え方である。
- 「〜している」の多義性:
- 日本語の「〜している」は、英語では「現在進行形(動作の継続)」と「現在完了形(状態の継続)」の両方をカバーする。
- 例:「結婚している」は動作ではなく状態の継続であるため、英語では is married または has been married となる。
- 時制の一致:
- 英語は主節の時制に引きずられて従属節の時制も変化する(時制の一致)が、日本語は従属節の内容が相対的に決まるため、時制の一致が起こらない。
5. 結論
英語の時制は、基準となる「点」と、そこに至るまでの「線(期間)」を厳密に使い分ける体系である。一方、日本語は「したか、していないか」という結果に重きを置く傾向がある。
英語の時制をマスターするには、単なる訳語の暗記ではなく、「今、視点はどこにあり、どの範囲の時間を指しているのか」というカメラのピント合わせのような感覚が必要である。
